ハルセル試験について

当社では長年ハルセル® を販売しており、 皆様にご愛用していただいてます。
ここでは、ハルセル試験方法について簡単にご説明します。

目次

1. ハルセル試験(ハルセルテスト)とは
2. ハルセル試験で何が分かる?
3. 実際に試験を行うには?
4. ハルセル試験をしてみよう
5. 結果の評価方法

 

1. ハルセル試験(ハルセルテスト)とは

ハルセル試験とはR.O.Hull博士によって発案された試験方法で、 台形型水槽を使用することで 連続した広範囲の電流密度での析出状態を観察することができます。また、 試験条件を変えることで電流密度との関係が簡単に読み取ることができます。

ハルセル試験装置

これは、陰極部分が斜めになっていることで陽極との極間距離の差ができ、そのため 高電流密度から低電流密度まで測定することができるのです。 この水槽を使用した試験をハルセル試験(ハルセルテスト)といいます。

 

2. ハルセル試験で何が分かる?

めっきをするにあたって、製品性能を維持するには浴の管理が大変重要です。
しかしながら、めっき浴は作業と共に、刻一刻と変化しています。 そのため、めっき浴に対し様々な試験を行い、常に管理していかねばなりません。
めっき浴への試験方法としましては、 化学分析や物理化学試験(pHや比重等)などで定量的に管理する方法と、 ハルセル試験・ハーリング試験など電着試験によって定性的に管理する方法があります。 その中でもハルセル試験は、実際にめっきを行うため皮膜の光沢具合やつきまわりなどから現在の浴状態を簡単観察することができます。また 特に事前に標準サンプルを作製することで、浴トラブル発生の予測し予防保全を行うことも可能です。 当社では試験結果の判別方法はめっき浴によって様々です。結果例を示した「ハルセル技術資料集」もご用意しております。

 

3. 実際に試験を行うには?

ハルセル試験は、測定するめっき浴によって試験条件が決まります。以下に試験条件の一例を示します。めっき浴によって加温条件や攪拌条件なども変わるため、当社ではハルセル水槽もこれに合わせて 様々な種類があります。用途に合わせてお選びください。

めっき液 陰極陽極全電流(A)時間(分)温度(℃)攪拌 備考
シアン化銅 無酸素銅(電気銅)25~1020~60無/空気PRを行うこともある
硫酸銅黄銅(真鍮)含りん銅/チタンイリジウム2~35~10R.T~30空気
ピロリン酸銅黄銅(真鍮)/鉄 無酸素銅(電気銅)2550~60 空気
ニッケル黄銅(真鍮)電解ニッケル
2~3 5~1040~60
黄銅(真鍮)電解ニッケル0.5~1 540~60空気金属不純物の有無の判別
スルファミン酸ニッケル黄銅(真鍮)SKニッケル(硫黄含有ニッケル)2~3 540~60 空気
クロム黄銅(真鍮)錫5%入鉛 53
40~50 裏面観察による塩化物混入の有無の判別
ニッケルめっきした黄銅(真鍮)※錫5%入鉛10140~50
塩化亜鉛 亜鉛25R.T.
酸性スズ鉄/銅2518~20 カソードロック(機械撹拌)

(参考文献:現場技術者のための実用めっき(Ⅱ) 日本プレーティング協会編 槇書店)

ハルセル水槽一覧

製品名製品番号外観特長
ハルセル(加温型水槽)B-53Wヒーターによる加温と空気撹拌が可能です。
ハルセル (空気カクハン型水槽)B-54Wハルセル空気撹拌型空気撹拌が可能です。
隔膜ハルセル (空気カクハン型水槽)B-54-DW隔膜ハルセル酸化イリジウム(チタンイリジウム)等の不溶性陽極を使用した時の添加剤消耗を抑えます。主に硫酸銅めっき用です。
ハルセル (並型水槽)B-55ハルセル標準的なハルセルです。主に半田、錫めっき用です。
ハルセル (並型ガラス製水槽)B-55-Gハルセルガラス製B-55と同様の形状でガラス製です。恒温槽を使うことで間接加温(湯煎)が可能です。
スマートハルセル B-53-SMWヒーターによる加温と空気撹拌はもちろん、オーバーフローによる撹拌が可能であるため、空気撹拌の行えないめっきにも対応が可能です。500ml槽で複合めっきにも対応。
ハルセル (クロム用水槽)B-56ハルセルクロム用6価クロムめっき用です。激しい温度上昇を防ぐため、1L角型水槽に穴あきハルセルを固定しています。(塩化ビニル製)
ハルセル (加温型水槽ロングタイプ)B-53-LWB-55-Lと同様の横長タイプで、ヒーターによる加温と空気撹拌が可能です。
ハルセル (空気カクハン型水槽ロングタイプ)B-54-LWハルセル空気撹拌型ロングB-55-Lと同様の横長タイプで、空気撹拌が可能です。
ハルセル (並型水槽ロングタイプ)B-55-Lハルセルロング通常のハルセルより陰極側を横に長くすることで、電流密度による差をより詳細に観察することが可能です。合金めっきなどに最適です。
ハルセル (並型水槽ロングタイプガラス製)B-55-LGハルセルロングガラスB-55-Lと同様の横長タイプでガラス製です。
てのりハルセル (空気カクハン型)B-54-HWてのりハルセル空気撹拌型B-55-Hと同様のタイプで空気撹拌が可能です。。
主に貴金属めっき用です。
てのりハルセル (並型水槽)B-55-Hてのりハルセル通常の1/8とより少ない液量で試験できます(33ml)。
主に貴金属めっき用です。
てのりハルセル (並型水槽ガラス製)B-55-HGてのりハルセルガラスB-55-Hと同様のタイプでガラス製です。
主に貴金属めっき用です。

何を使用して良いのか分からないという方には基本装置すべてを含んだセットもございます。

 

4. ハルセル試験をしてみよう

実験は以下の手順でおこなってください。

(1) 条件(陽極の種類、陰極の種類、浴温度、攪拌条件など)を確認し装置を設置する

(2) 試験片(陰極板)の前処理を行う

当社では様々な金属板を試験片として用意しておりますが、ほとんどのものに表面を保護する意味で半透明または青いフィルムを試験片に貼り付けています。試験をする際はそのフィルムをはがし、その面がめっき面になる様にお使いください。また、フィルムの接着剤が試験片に残る場合もありますので、脱脂処理は十分におこなってください。
フィルムを剥がしてお使いください

(3) 陽極・陰極は正しく設置されているかを確認したのち、所定時間通電を行う

陰極板(試験片)が斜めに設置されていることが多々あります。しっかりと試験片をセルの壁につけるように設置してください。
写真のように陰極板が浮いてしまうと正しい評価ができません


不純物が入った場合の試験結果

5. 結果の評価方法

めっきを行うと以下のような状態の試験片が得られます。写真は光沢スズめっきで試験を行った場合の結果です。写真左側が陽極に近いため高電流部、右側が低電流部となります。 左側のやや黒味がかって見える部分は「ヤケ」とも呼ばれ、皮膜が焦げたような状態になっており、 実際の商品などには使えない部分です。
上の標準液と比べ光沢剤(添加剤)が少ない液では、全体的な光沢状態や 低電流部側の未析出などの違いが見られました。

高←電流密度→低
標準浴

光沢剤過小浴

ただし試験片の前処理(脱脂処理)が 適切に行われていない場合では、同様に低電流部の未析出やピットが発生する可能性があります。そのため得られた結果が前処理が不十分だったのか浴組成が変化しているのかが 分からなくなってしまうことがあります。 そのためにも前処置は十分行ってください。

試験片上の電流密度分布は全電流値によって変わります。分布状態は B-61ハルセル®電流密度早見板を試験片にあてることで簡単に電流密度での変化を 観察することができます。

早見板と試験片を重ねた状態

例えばこの実験は全電流5A で行ったものなので、 左側から1cmの場所は電流密度25A/dm2となり、 この試験片の場合では電流密度25A/dm2以上ではヤケが生じることが分かります。 外観は観察する位置によって変わるため、 早見板の開口部 を利用することで毎回同じ部分を観察できます。

また、この早見板の数値はR.O.Hull関係式およびドイツ規格(DIN50957-1)*1を参考に以下の式から算出しています。

C.D =I・(5.10-5.24・logL)

C.D:電流密度(A/dm2)

I:総電流(A)

L:高電流側から測った陰極上の距離(cm)

C.D =I・(5.10-5.24・logL)

C.D:電流密度(A/dm2)

I:総電流(A)

L:高電流側から測った陰極上の距離(cm)

以上、こちらでは基本的なハルセル試験についてご説明いたしました。
この他、ハルセル試験についてのご相談がございましたら お気軽に当社までご連絡ください。

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ハルセル試験について Q&A

ハルセルの選び方


※「ハルセル」は山本鍍金試験器の商標登録商品です。
商標登録第1294468号(10類・理化器関係)/商標登録第1278949号(11類・電気器関係)
本文中では一部(R)マークは省略させていただきました。

※2019年6月、ハルセルロングタイプがドイツ規格(DIN50957-2)に追加されました。このDIN規格の作成に弊社も貢献しました。

当社社長とHarry Hull氏 (SUR/FIN2017会場にて)

R.O.Hull博士のご子息であるHarry氏から当社ハルセルの品質は”世界一”とお褒めの言葉を頂くと共に、ハルセルの技術拡散および長年の販売に対し喜んで頂きました

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